光源
ガイダンス
レーザセーフティガイド
レーザ光の危険性
レーザは人工的に作られた特殊な光で、自然光とは全く性質が異なります。
指向性があり、単色性の作用はレンズの集光作用によりパワーが集中し、高密度になります。
中には、一瞬で金属をも溶かしてしまうほどの強力なパワーになることもあります。
レーザ作業者が、これらの特性を知りながらも、リスク管理として予防対策を怠ると、災害の発生や人体へ重大な障害を及ぼし後遺症が残る可能性が高くなります。
レーザ光による人体への影響
「レーザ製品の安全基準」 JIS C6802では、人体への保護の対象となる波長は180nm~1mまでの範囲と規定されています。
眼に関しては、下記図1に示すように光の波長域により障害の部位が異なります。
眼への傷害
大部分が角膜の表面で吸収され、一部透過した部分が水晶体で吸収されます。
高出力の紫外線レーザが暴露されると光化学作用により組織が損傷され、短期的には角膜の炎症(火傷)が起こり、長期の暴露では光作用により白内障になる場合もあるといわれています。
すぐに眩しさを感じ、瞬きする防御反応。
但しこれには時間的な限界があり、危険を感じて防御反応に出る約0.25秒の間には眼にレーザが入ってしまいます。ここでこの時間内に眼に入ってもほぼ安全と思われるレーザは、おおむね1mW以下の出力が目安になります。それ以上の出力では、熱作用と集光作用により網膜(図2)が局部的に損傷を受け、永久的な障害を与えるといわれています。
可視光域同様に網膜までレーザが達します。
特に注意すべき点は非可視域であるため、損傷を受けるまで気がつかず、眼にとって非常に危険な波長域といわれています。
世界の安全基準
【国際機関】 IEC60825-1 「Safety of laser products」
【日 本】 JIS C6802 「レーザ製品の安全基準」
レーザ安全基準とは
レーザ機器に関しての国際規格“IEC60825-1”を作成し、IEC加盟国における共通の安全基準となっています。
IEC60825-1とは
IECとは、国際電気標準会議
【International Electrotechnical Commission】
電気・電子分野における国際標準化機関で、国際貿易の円滑化・促進のために以下を目的とします。
*電気・電子工学技術分野の国際規格の策定及び普及を推進。
JIS C6802について
IEC60825-1の基準に準拠した日本工業規格
世界的にレーザ製品を正しく製造し、使用するための基準がIEC60825-1によって定められ、
日本は、これに準拠したJISC6802にレーザ製品の安全基準をもうけています。
JIS C6802は、国際規格であるIEC60825-1を翻訳したものであり、「世界的に共通の安全基準」と言えるものです。
この規格に準拠している限りは「レーザ光を安全に使用できる」ものとし、レーザの波長や強さ等に応じて求められる安全対策が異り、その内容から危険表示ラベルに関するまで規定しています。
レーザのクラス別分類(IEC60825-1)
各クラス別分類は、被ばく放出限界(AEL Accessible Emission Limit : 該当レーザクラスで許容されるレーザ発光レベルの上限)を用いて定義されています。
クラス1 |
低パワーレベル: 通常の操作条件(合理的に予見可能な操作条件)の下で、安全なレーザとみなされています。 |
クラス1M |
低パワーレベル(302.5nm~4.000nmの波長)、平行大口径ビーム、又は広がりビーム 裸眼では安全、光学機器を用いてレーザを観察すると危険である。 |
クラス2 |
低パワーの可視光(400nm~700nmの波長)従来と同じ可視光レーザで、瞬きや回避の行動で安全である。 長時間観察は眼に障害を発生する可能性あり、特に青光は長時間観察は危険。 パワー条件:CW 可視光1mW以下
|
クラス2M |
低パワーの可視光(400nm~700nmの波長)、平行大口径ビーム、又は広がりビーム可視レーザに適用され、 裸眼では瞬き回避応答が出来れば安全である。 光学機器を用いて直接レーザ光を観察することは潜在的に危険であるとみなされています。 |
クラス3R |
302.5nm~106nmの波長範囲のレーザ光で、直接ビームを見ることが 潜在的に危険であるとみなされています。 パワー条件:CW 可視光5mW以下 それ以外 クラス1の5倍以内
|
クラス3B |
直接ビーム内観察は危険。 ただし拡散反射による焦点を結ばないパルスレーザ放射の観察は、ある条件下では安全である。 パワー条件:315nm以上の光 CWレーザ 0.5W以下
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クラス4 |
高出力(クラス3BのAELを超えるもの)危険な拡散反射を発生するレーザ 一時的であっても、直接ビーム光を皮膚や目にさらすことが危険とみなされているだけではなく、 拡散反射光であっても、皮膚や目に障害をもたらすとみなされている。 火災を引き起こす原因ともなると考えられています。 |
※使用されるレーザの各クラスを確認し、障害防止対策を行うことが大切です。
レーザのクラス別障害防止対策
厚生労働省通達「レーザ光線による障害の防止対策について」では、レーザを用いた作業における安全予防対策の具体的内容を クラス1、クラス2以外のレーザ機器を対象に定めています。
措置内容(項目のみ) | レーザ機器のクラス | |||||
4 | 3B | 3R | 2M・1M | |||
レーザ機器管理者の選任 | ◯ | ◯ | ◯ ※1 | - | ||
管理区域(標識、立入禁止) | ◯ | ◯ | - | - | ||
レーザ機器 | レーザ光路 | 光路の位置 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
光路の適切な設計・遮へい | ◯ | ◯ | ◯ ※1 | - | ||
適切な終端 | ◯ | ◯ | ◯ ※1 | ◯ ※2 | ||
キーコントロール | ◯ | ◯ | - | - | ||
緊急停止 スイッチ等 |
緊急停止スイッチ | ◯ | ◯ | - | - | |
警報装置 | ◯ | ◯ | ◯ ※1 | - | ||
シャッター | ◯ | ◯ | - | - | ||
インターロックシステム等 | ◯ | ◯ | - | - | ||
放出口の表示 | ◯ | ◯ | ◯ | - | ||
作業管理・健康管理等 | 操作位置 | ◯ | - | - | - | |
光学系調整時の措置 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ||
保護具 | 保護メガネ | ◯ | ◯ | ◯ ※1 | - | |
皮膚の露出の少ない作業衣 | ◯ | ◯ | - | - | ||
難燃性素材の使用 | ◯ | - | - | - | ||
点検・整備 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ||
安全衛生教育 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ||
健康管理 | 前眼部(角膜、水晶体)検査 | ◯ | ◯ | ◯ ※1 | - | |
眼底検査 | ◯ | - | - | - | ||
その他 | 掲示 | レーザ機器管理者 | ◯ | ◯ | ◯ ※1 | - |
危険性・有害性、取扱注意事項 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ||
レーザ機器の設置の表示 | ◯ | ◯ | - | - | ||
レーザ機器の高電圧部分の表示 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ||
危険物の持ち込み禁止 | ◯ | ◯ | - | - | ||
有害ガス、粉じん等の措置 | ◯ | ◯ | - | - | ||
レーザ光線による障害の疑いの ある者に対する医師の診察、処置 |
◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
◯印は、措置が必要なことを示す。
措置の内容は「レーザ光線による障害防止対策要網」で定められた内容を当社で要約したものです。必ず原文を参照してください。
※1 400~700nm波長以外のレーザ光線を放出するレーザ機器について措置が必要である。
※2 JIS規格10.6に掲げるレーザ機器にあたっては、レーザ光路の末端について措置が必要である。
予防対策として
重大な障害や後遺症を残さないためにも、レーザ光から守る安全対策の強化をする必要があります。
レーザ光を人体にあびることで起きてしまう障害だけではなく、レーザ光が被加工物や周辺装置の物体を照射して発生する有害物(ガスや粉塵など)の吸引による二次的被害を受ける可能性もあります。
このため、レーザの使用者や管理者はレーザの事故を回避するために様々な対策をとる必要があります。
近くにいる作業者のためだけではなく、近くに来た人の眼や皮膚を守るために、レーザ保護メガネやゴーグルと同じような特殊素材でできた窓・カーテンによる眼の保護があります。レーザ発振器の種類(波長)や出力パワーによって選択する必要があります。
レーザ光が誤って眼にあたらないように特殊な素材でできたメガネ・ゴーグルによる眼の保護があります。
レーザ発振器の種類(波長)や出力パワーによって選択する必要があります。
レーザの取扱いを周囲に周知するために、部屋の入り口などに掲示するためのパネル・プレートによる表示があります。
このパネルやプレートはレーザ機器(装置)の使用者が自ら掲示する必要があります。
レーザや加工機の危険性や注意事項を表示するためのシール・ラベルによる危険性表示があります。
このシールやラベルはレーザ機器メーカーがJIS C6802基準に従って表示しなくてはならないものです。