ホルダー
ガイダンス
ミラーホルダーアプリケーションノート
ミラーホルダーはたくさんの種類があり、どれを選定すれば良いか分かりにくいと耳にします。
そこで各種のミラーホルダーに使われている機能を6つに分類してみました。
この6つの機能を理解すれば、目的に合った種類のミラーホルダーを容易に選定することができます。
各種ミラーホルダーの機能分類表
品 番 | 取付中心 | 回転機構 | 微調中心 | 素子固定 | 操作方向 | 調整部 |
---|---|---|---|---|---|---|
MHG | オフセット | なし | オフセット | 側面セットビス | 裏 | ネジ |
MMHN | オフセット | なし | オフセット | ミラーケース | 裏 | ネジ |
MHAN/MHA | ミラー中心 | ミラー中心 | ミラー中心 | ネジリング | 正面/裏 | ネジ/マイクロ |
BHAN | ミラー中心 | ミラー中心 | ミラー中心 | ネジリング | 正面/裏 | ネジ/マイクロ |
BSHL | オフセット | なし | ミラー中心 | ネジリング | 上方 | ネジ |
ミラーホルダーには初めからロッドが付いているタイプと付いていないタイプがあります。
初めからロッドが付いているタイプ(例えばMHAN)は、ロッドの中心軸にミラーの反射面の中心が来るように設計されています(MMHN-25RRO、MMH-50M6は例外)。よって、光軸にロッドスタンドの中心を合わせて設置すれば、ホルダーの取り付け向きが変わってもミラーに照射するレーザビームの位置が変わらないため、ミラーホルダーの設置が容易に行えます。
ロッドが付いていないミラーホルダーにロッドを取り付けると、ロッドの中心とミラーの中心が合っていない場合がでてきます。このような、取付中心にオフセットがあるような場合、レーザビームとミラーホルダーの位置関係に注意が必要です。(下図右参照)
取付中心にオフセットがある場合のミラーホルダーの設置方法は、まず、ホルダーを固定する前にミラーのだいたいの角度を合わせます。指定された入射角度でレーザビームがミラーの中心を照射する位置を見つけその位置でミラーホルダーを固定します。
このとき、ホルダーを固定するベースプレート等の取り付けネジが、定盤やブレッドボードの穴位置と合わない場合があります。このため、ミラーホルダーの固定には、オフセットした位置に止められるように予め設計されているベースを使用するか、設置位置に自由度があるベース(例えばマグネットベース)を使用します。
特に光学ベンチを使用される場合は、ミラーの中心がベンチの中心に来る必要があるので、注意が必要です。
MHGホルダーにはミラーの反射面中心にロッドの中心を合わせる、専用のロッド取付用プレート(MHG-BPRO)が用意されています
MHANホルダーやBHANホルダーは2軸ジンバル構造になっており、ミラーの反射面をあらゆる方向に向けることができます。さらに、ジンバル機構の回転中心とミラーの反射面中心が一致しているためで、ミラーの中心にレーザビームを入射させれば、ミラーの向きを動かしてもビームがミラーの中心からズレることがありません。このため、入射ビームの位置を変えたり、ホルダーの設置位置を動かしたりする必要がなく、ビームを反射させることができます。ミラーが回転する範囲に制約がないので、反射ビームは水平方向の角度だけではなく、垂直方向や斜め方向にも向けることができます。しかし、ビーム径の大きさや入射角度によっては、ミラーホルダーの枠によってビームが欠けてしまい、反射ビームが入射ビームの形状と異なってくる場合があります。
ミラーホルダーには微妙な角度を調整できる微調機構が備わっています。微調機構には2タイプあって、ミラーの反射面中心が回転中心で調整できるタイプ(ジンバルタイプ)とミラーの反射面外に回転中心があるキネマティックタイプがあります。
一般的な使用方法では差が出ませんが、干渉計やレーザの共振器など微小な光路長の変化を問題にする使い方では差が出てくる場合があります。
代表的なキネマティックタイプのミラーホルダーの角度調整による光路長変化を右の表に示します。
ジンバルタイプは光路長変化が小さくできるメリットがありますが、ジンバルの構造が複雑で、部品点数が多く、温度特性などの誤差要因が多いという欠点があります。
一方、キネマティックタイプは若干の光路長の変化が生じてしまいますが、構造が単純で部品点数が少なく、温度特性や経時変化が安定しています。高精度を必要とするレーザの共振器では、光路長の調整が煩雑になるデメリットを感じていても、安定したキネマティックタイプが採用されています。
キネマティックミラーホルダーの角度調整による光路長変化
品 番 | 調整範囲 〔°〕 |
最大光路長 ズレ (入射角度 0度) 〔mm |
0.5度振ったときの 光路長変化(mm) |
|
---|---|---|---|---|
入射角度 0度の 場合 |
入射角度 45度の 場合 |
|||
MHG-12.7 | ±3 | 0.5 | 0.17 | |
MHG-30 | ±3 | 1.0 | 0.33 | 0.24 |
MHG-50 | ±2 | 1.0 | 0.51 | 0.36 |
MHG-80 | ±2 | 1.5 | 0.77 | 0.55 |
MHG-100 | ±2 | 2.1 | 1.03 | 0.73 |
干渉計やレーザ集光などの精密な光学実験では、面精度の高いミラーが使用されます。このミラーは厚く硬い材質なので、形状が変形することが無いように感じられます。しかし、実際には指で押える程度の軽い力を加えるだけでも、ミラーには微小な量の変形が生じます。目視ではこの変形量は観察できませんが、光を使った精密実験では無視できない大きさで観察されることがあります。このため、ミラーホルダーにミラーを固定する場合は、使い方にあった固定方法を選ぶ必要があります。
樹脂製のリングとアルミ製のネジリングでミラーを固定します。ミラーはミラー枠の基準面に押し付けられるので、ミラーの厚みが変化しても、ミラーの反射面の位置が変わることはありません。衝撃や輸送などの振動で、光学素子がホルダーから脱落するリスクが小さく、安全に使用できます。精密な光学系で使用する場合は、ミラーにストレスがかからないようにネジリングを締めなければなりませんが、締め付けの加減が難しいという欠点があります。
ミラーの側面をホルダーの枠の2箇所と先端樹脂のネジ1箇所で固定します。ミラー枠の突き当て面がミラーの裏面を支えるため、ミラーの厚みが変わることで反射面の位置が変わってしまいます。また、ミラーは側面から保持されているので、ミラー枠に対し傾斜して取り付く可能性があります。ミラーに対するストレスはミラー側面を押え付けるネジのトルクでコントロールでき、ホルダーを設置した状態でもトルクを可変することができます。衝撃や振動がある場所で使用する場合は、光学素子が脱落するリスクが高く、注意が必要になります。
複雑な光学系や狭いスペースに構築される光学系では、ホルダーが操作しにくかったり、ホルダーの調整機構どおしが干渉したりすることがあります。このような場合には、微調整機構の操作方向を変えたホルダーが便利です。作業性を考えて、上操作や横操作など選択できます。
ホルダーによっては機構が複雑になり、安定性が悪くなる場合があります。
微調機構の調整部は目盛が付いたマイクロメータのタイプとピッチの細かい(ピッチ0.25mm)精密ネジのタイプがあります。マイクロメータのタイプはツマミが長いため、つまみ易く※頻繁に操作する作業に向いています。
精密ネジのタイプはマイクロメータとそん色なく細かな調整が可能で、調整部はホルダーからの飛出し量が小さいので光学系をコンパクトに納めることができます。
※感覚には個人差があります。